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金沢大学・人文学類・地理学研究室


 みなさんは「地理」と聞いて何を思い浮かべますか.各国の首都の名前,鉄鉱石の産地,各地で採れる農産物の種類,ケッペンの気候区分など.確かにそれらも「地理」を学ぶうえで重要な知識ではあります.しかし大学で学ぶ「地理学」において最も重要なのは,そうした知識を結びつけて理解するための論理であり考え方であり,そして何より想像力なのです.「どうしてこの地域には自動車の部品を生産する工場が集中しているんだろう」,「なぜ日本のスーパーマーケットのかぼちゃがトンガ産なの」,「私にとっての金沢と,あなたにとっての金沢,この二つは同じものなの」.こうした問いに答えるには知識だけでなく,豊かで柔軟な地理的想像力が必要とされます.そうした地理的想像力は文献を読んで調べるだけでなく,実際に現場(フィールド)に出かけて地域の姿を自分の目で見て,現地の人びとの声に耳を傾け,そして自分の頭で考えるところから生まれてきます.
 「地理学」は,このようなフィールドワークを通じて人間と環境との関係を総合的に理解する学問です.そのために講義や演習といった室内の学習だけでなく,野外でおこなう「地域調査実習」をたいへん重視しています.2年生および3年生の夏休み期間中に1週間の泊まりがけでおこなう地域調査実習はきっとみなさんを新たな世界との出会いへと導いてくれるでしょう.そんな新たな出会いを求める人びとを,わたしたちは待っています.

地理学の特色の一つはフィールド・ワークを重視することです.自分の足で地域に出かけ,地形の形状や土地利用の現状,労働現場を見て,人々の声を聞き,資料にあたり,問題点を考えること,単なる「見学」ではなく,自らが身体ごと現場に関わること,そうしたフィールド・ワークを通じて地理学の研究は深められます.そのため地理学教室では室内でおこなう実習とともに野外でおこなう地域調査実習に重点を置いています.

 2年次に履修する「人文地理学実習」および「自然地理学実習」では各種地図の作成と読図,空中写真の判読,地域データの収集とコンピュータによる統計処理や画像処理を学びます.さらに授業時間以外にも年に数回,主として北陸地方の企業・事業所の訪問,都市開発の見学,露頭観察や地形調査などをおこなうことによって,現代社会におけるさまざまな地域問題や環境問題について体験的に学習します.
 地域調査実習は2年生から3年生にかけて実施されます.2年生の「地域調査基礎実習」では、地域の実情と問題を広範に知るための基礎的な地域調査が4泊5日ほどかけておこなわれます.3年生になると2年生での経験と各自の研究関心に基づいて、「地域調査応用実習」「自然環境応用実習」「地域プランニング実習」のいずれか一つを選択して、より専門的な地域調査がおこなわれます.期間は同様に4泊5日ほどですが,こちらはより専門性と応用力が必要となります.これらの地域調査の成果は,調査後にレポートとして提出され,『地域調査実習報告書』にまとめられます.
  こうした手順を踏んだのちに,4年間の大学での学習の集大成として卒業論文に取りかかります.テーマは各自が興味あることについて自由に設定できます.実習や地域調査での経験を踏まえて,各自が自分の力で調査をおこない,資料を集め,分析をおこない,論文に仕上げていきます.このように自分で課題を見つけ,科学的な分析と合理的な説明によって,それを一つの成果にまとめてプレゼンテーションしていくという作業は,卒業後に企業や社会で求められる不可欠の技量であり,その鍛錬にもなります.


Website: http://geography.w3.kanazawa-u.ac.jp/Welcome.html

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2016年3月に日本地理学会にて「地理学のアウトリーチ研究グループ」が立ち上がりました。地理学の専門家、非専門家に限らず、地理学に携わる多くの人を繋げ、地理学の社会的な関心を高めるための仕組みの構築を目指しています。ご関心のある方は地理学のアウトリーチ研究グループまでお問い合わせください。

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